その日は、和とたくさんたくさん笑って、久しぶりの再会を楽しんだ。


やっぱり、和は私の最高の親友だと思った。
和と出会えて本当によかった。



帰り道。
その日は自転車だったから、ペダルを漕いで帰宅までの道を走る。


……駅から自転車で帰ると、堪らなく切なくなる。

高校生の私も、こうやって帰っていたから。



あれからやっぱり、聖は一切連絡を寄越さなかったし、顔を見せなかった。

こっちからかけても繋がらないし、家もいつも留守だった。



…ねえ、伊織?


何もかもがうまくすり抜けて。

何もかもがうまく交わりあう。


こんな、世の中だから。




私は伊織ともう一度出会える奇跡を信じたんだよ。



16の、あの時からずっと。
今まで。



自転車を駐輪場に止めて、私はマンションの入り口へ向かった。

あの時から何も、変わらない。


至って平凡な家庭だし。
至って平凡な生活だし。



だから。