「じゃあ、どこ行こうか」


聖が私の手を取ったまま、反対の手を顎に置いて首をひねらせて唸る。


「…………とりあえず」


「え?」


「手、放して」


「何で?」


「いや、彼氏じゃないから繋ぐ意味わからない」


「友達でも、繋いでよくない?」


「………………」


なんて、強引なんだろう。
ムカつくんですけど。

バッと力任せに手を解く。
すると、聖はがっかりした顔で私を見た。


……彼氏じゃねえっつうの!
伊織以外、無理だし。


「ちぇっ、いずちんは一途かあ」


「いずちんってゆうな!」


「いずちゃん」


「…………」


頭が痛い。
会話にならない。

「お腹空いた?」


聖は上目遣いで、覗き込むように私を見て言う。
そんな顔しても無駄です。


「特に」


「んー甘いモンは?」


「…特に」


「あ、今絶対間があったよね?近くにおいしいケーキ屋あんの!行こうよ」


「行かな………えっ!おい!」


私の答えなんかお構い無しに、聖は私の腕を掴んで歩きだした。
こいつ、本当に何なんだ!?