先生と2人きりになった後
私の心には不安が渦巻いていた

「柚乃ちゃん
1年前、倒れて入院した時
私が言ったこと覚えてる?」

「私の脳は深刻なダメージを受けている
ってやつですか?」

「うん。
普通に生活している分には何も問題ないと思ったし、確信もなかったから何も言わなかったんだけど…
今回のことでやはり話しておかないといけないと思ったんだ。」

私の中で不安が大きくなる

「君は過去に辛い恋をした
そして、それが原因で男性恐怖症になった」

「はい…。」

「その時、君はショックとストレスで相当脳に負担をかけていたんだ
そして、あの日倒れてここに運ばれてきた
とても危険な状態でね…」

「・・・!」

初めて聞く話…
当時、私が聞いたのは栄養失調と睡眠不足からくる疲労困憊
それが原因で倒れて回復するまで入院…
ということだったから…

ショックとストレス…
そして脳への負担…

私の心は不安で覆われそうになっていた

「身体的な問題はすぐ解決した
後は君が目覚めるだけだった
だけど…
君の心は外界を閉ざしてしまった状態で
目覚めるかどうかわからなかったんだ
辛うじて目覚めはしたんだけど…」

先生が一瞬躊躇ったように口を固く結び
何かを決意したようにたった一言

「君は記憶を失った」

そう静かに言った