かといって、私だけ座るのも……。






「ほら、早く座れよ。電車動くぞ」





ちょうど橋本くんがそう言った瞬間に、進み始めた電車。





なにも身構えてなかった私は、その発車時の揺れに耐えられず、よろけてしまった。








……とっさに掴んだ橋本くんの腕。





おかげでなんとか倒れたりはしなかった。





「ご、ごめん!」





しばらくして我に帰るとパッと手を離した。






勝手に触っちゃった……。





うわ、恥ずかしい…よぉ。






「ほら見ろ。……座んな」





そんな私の心などお構いなしの橋本くんは、私の肩を押すようにして、優しく私を座らせた。