真子は、この高校の理事長の孫で、



気に入らない奴を



退学にさせた前科があるため、



彼女に逆らえる者は極僅か。



あまり関係を持たないようにしていた。



「それがどうしたんだ?」



綾介としては



普通に聞いたつもりだったが、



真子は少し不機嫌そうな顔になった。



「モルテは誰にするの、ってこと」



「なにいってんだよ」



綾介の代わりに、



久琉斗がそう言った。



クラス一のイケメンに言われると、



真子もそこまでは



悪い気分にならないらしい。



「モルテってのは、
自然になるもの…じゃね〜か。
あらかじめ決めとくものじゃない」



「だって、三人なんでしょ?
真子みたいに
大切にされてる人間が消えたら、
どうするつもり?間君」



そこに、綾介が余計なことを



無意識のうちに言い放つ。



「温室で育てられてるだけだろ」



言い終わったあと、



真子の顔が怒りで歪むのが見えた。



「あんた…退学にされたいの?」



「そんなの言ったら、
逆にモルテになる。
それ以上はやめといた方が…」



綾介の警告が終わらないうちに、



真子は叫んだ。



「あんたがモルテになれば!?
真子はモルテにならないから!」



「誰だってモルテになる可能性がある。
それ以上はやめとけ」



「上から口調ムカつくの!
みんな、この男をモルテにしないと
退学にさせるからね!」



その瞬間、綾介は



悪意のある眼差しに包まれたような



気分を味わった。



__気の所為ではないだろう。



久琉斗と未来のような親友以外は、



綾介をジッと見ている。



モルテに…される。



綾介がモルテになるという先が



ほぼ、確定された。