椅子から崩れ落ち、



綾介は地面に手を着く。



「はぁっ…!はぁ…!はぁ…っ!
みら、い…!ごめん…っ、はっ」



綾介が荒い息を繰り返す。



綾介は友達思いで純粋な、



そんな心を持った



ある意味では素晴らしく、



ある意味では面倒臭い人間。



久琉斗が背中をさする。



「綾介…」



「俺が__未来を__」



「綾介って!聞け!」



ビク、と肩を窄め、



久琉斗の方を



怯え切った目で眺める綾介。



「…お前は深口を…未来は絶対、
お前を恨んじゃいない。
最期の顔、見たろ。
最期の言葉を聞いただろ?」



久琉斗の問いに、



綾介は頷く。



「恨んでない…心配すんな。
それに、未来は心の中で
存在してるはずだろ」



こんな言葉しか



かけられない自分が



酷く惨めに見えてきて、



これ以上言うのは、やめた。



まるで自分が、綾介とは違って、



陳腐な人間のように



見えたから。



「…未来」



綾介が蚊の鳴いたような



小さな声で、囁く。



「…ごめん…」