「俺だって泣くよ、たまには。
あのときだって泣いたし。
だから、泣きたいとかじゃないんだ」

「…っ」

「なんかごめんな」

「え…?」

「気を遣わせたな」


フと無理に笑う原谷くん。
泣きたいわけじゃない、
そう言うけど、
きっとどこかで泣いてるんだ、今も。



きっと原谷くんは、
サッカーが大好きなんだ。

でも、怪我のことが甦って
サッカーが怖い。



逃げたらダメ、とか
あたしなんてこと言っちゃったんだろ…。



隣に座る原谷くんは、
中庭から少し見える
グラウンドをジっと見ていた。