「あ、羽柴といえば今日ね、新たなスクープが入ったんだよ」

「はぁ、やっとか」


ここ最近は、やはりアノ話題が中心になることが多く、そろそろ嫌気がさしていたところなのだ。
アノ話題になるくらいならば、どんなつまらんスクープであれど、身を乗り出して聞いてやりたいとさえ思えた。

それにしても、そんなに生き生きとスクープ探しをするのなら、野球部など辞めて、新聞部にでも入れば良いのに。
否、だめか。
こいつは金が動かなければやる気を出さないクズだった。
下手すればそのうち、色んな情報を入手しては新聞部に売り付けるという新たなビジネスを開拓しそうだ。
羽柴を脅して金稼ぎしようとするほどのやつだ。やりかねない。

冷めた目をする俺に、ずずいと、朝倉は顔を近付ける。


「なんと!」

「・・・・・・・」

「なんとなんと、あの屋島萌が、自ら羽柴をフッたって!羽柴は女にフラれたの初めてだったみたいでさ、相当ショック受けてたみたいよ!」

「・・・ああそう」

「でもね、周りの屋島萌に対するバッシングが酷いらしくてさ、まぁ自業自得と言えばそうなんだろうけど、好きじゃなかったんだし仕方ないよね」


どうしてそれほどまでにテンション高く、そんな話ができるのかが理解できない。
何か、違法薬物でもやっているんじゃないのか。
何もしていなくてこれならば、それはそれで恐ろしい。


「・・・・で、荻野目くんはこのままでもいいの?」


気を取り直した朝倉が、俺を見た。
今、こいつが言わんとしていることが理解できないこともない自分が、何となく嫌だと思った。


「屋島萌は素直じゃないけど、今、すごーく不安定で、きっと荻野目くんのことを待ってると思うなぁ」


そう言われて、俺が放っておけないことを知っているくせに。
俺もそれを分かってるくせに。
体は走り出してしまう。

どうせこんな話をしたのだってわざとだろう。憎たらしい。
俺だって分かっているのだ。

後ろで、ケケケと高笑いされてるのだって、腹が立つほど悔しいけれど。

もう、好きなのだから仕方がない。