りんは黒崎の姿を見るなり、いつもと変わらない大きな声で言った。

「あー、黒崎くんおはよー!!!どーしたの、こんな朝早くに!まだ6時半なのに!」

7時半に来ると言っていたのに、りんはもう起きていた。

黒崎はそれに少し驚いた。

まあ、自分も人のことは言えないのだが。

「ああ、ちょっと張り切りすぎて早く来すぎた。大丈夫だった?」

「全然だいじょーぶだよー!もうしたくは済んでるし、あと湯豆腐食べて着替えるだけだから!」

黒崎の耳に、この時期には聞きなれない単語が飛び込んできた。

「ゆ、湯豆腐?」

「うん!朝ごはん。よかったら黒崎くんも食べてく?おいしいよ!!」

「な、なぜこの時期に湯豆腐?」

疑問すぎて、黒崎は尋ねた。

「え?湯豆腐って、年中無休の食べ物じゃないの?旬とかあるの?時期とかあるの?」

「え?普通、冬とか、寒い時期に食べるものじゃないの?」

すると、りんはとても驚いた様子で答えた。

「へぇ~、そうなんだぁ!湯豆腐って作るの楽だから、季節とか気にしないでほぼ毎日食べてたー!」

どうやら、吉岡家は相当変わった食生活をおくっているらしい。

「まあ、立ち話も何だから、あがってあがって!」

「ああうん。おじゃましまーす。」

黒崎は吉岡家に足を踏み入れた。