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君が家にやって来るのは…、神出鬼没。


いつも私を驚かせてばかりだったけれど、

今にして思えば…


君にとっては、特別なものでもなかったのだろう。



平気な顔して、

さらりと…やってのける。









「こらあ~!!涼太あ~、なんだこりゃあ~!!!」


ある年の…クリスマスイヴ。

ウチの窓の外から、お父さんの叫び声が…響いてきた。




「あ。もうばれたし。」


ケロリとそう言って、君はその…窓を開ける。







「なあ、電気消して?」



「ええ…?」



言われるがままに。

私が部屋の電気を…消すと。






「こーたあ~!!!スイッチオン!!!」


君は、君の弟の名前を…叫んで。
それと…殆ど同時に、

家の側に立つ、杉の大木が……


ピカピカと、光を灯した。





「うちは寺だぞ、クリスマスのイルミネーションなんか……」


「………ププっ、『クリスマス』?いや、日本一派手なお寺さんになると思って。いい考えでしょ?宣伝にもなるし。」



「アホかーっ!やめろ~ッ!!」



「……お、オヤジの頭もピカピカしてるよ!」


「こんの~、クソ坊主っ!!」


外を犬っこのように逃げ惑うコウタが…、君に代わって、羽交い締めにされると…。



「坊主に『ボウズ』って言われたくない。」
……余計な…一言。

もちろん、ポカリ、と、げんこつを食らっていた。




君は大いに笑いながら…我関せずとピシャリと窓を閉じて、お父さんの声をシャットアウトした。




それから、私の方に向きなおすと…

「言っておくけど、お前も共犯だからな。」



テーブルに置いた二つのグラスに、ジュースを注ぎ始めた。





「………。え……?なにこれ、泡がいっぱい!」


「そりゃあ、ビールだからな。」



「……ええっ。」


「大人への…第一歩だ。――…ホラ」




差し出されたグラスをもつ私の手が……震えていた。



「しょーもないまじめっこだなあ…。」



君は大きく溜め息ついて。


目の前で…それを、ぐびぐびと飲み干した。




「ぷはあ~!……旨い!」


私はゴクリと生唾を飲んで…。



「えいっ」


と…、一口。





「………あれ…?これ…甘いよ?」



「そりゃそーだろ。なんせ、子供ビールだし。」



瓶のラベルには……『こどもビール』の文字。


「残念ながらアップル味だ。……て、お前……泡ついてるぞ。」



「え。」



「……ぶはっ……、…サンタみてー!!」



屈託ない笑顔は……


淡く、

幼く、



でも…確かに、




心に…染み付いている。







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