そのまま細い腕を引っ張って抱きしめた。
小さくて壊れてしまいそう。
午前中のゆったりとした時間が、海とともに流れていく。
俺の耳には心地良い波の音と、大好きなヤツの泣き声。
「いつまで泣いてるつもりだよ……。そろそろ泣き止めチビ」
「神城くんが名前で呼んでくれたら泣き止む……。と、思います……」
「はぁ?なんだよそれ……」
「……うぇ~ん……」
チラリと俺を見上げて今度は嘘泣き。
ズルイくて生意気で腹立つヤツだけど、愛しい存在。
お前だって俺のこと名前で呼ばないくせに。
大和のことは名前で呼ぶのに俺だけは常に名字呼び。
「お前こそ名前で呼べよ……」
「……伊月くんっ……。あたしのことも呼んで下さい…」
「分かったっつーの!だから……そんな目で見んな」
涙目で上目遣いされても理性がヤバくなるだけなんですが!?
案外、普通に名前で呼びやがったし……
今までとは違うタイプの女で面白い。