そんな弱々しい父親の顔を見てると、恨むなんてことできねぇよ。
書斎のソファーに座ってやりきれない思いをため息に乗せた。
「伊月。覚えておいてほしいことがある」
「なんですか?」
「母さんを愛していたこは本当だ。これだけは忘れてくれるな」
祖父が無理矢理、愛していた二人を引き離した……。
何より会社の繁栄を優先するために。
俺にはそんな考え想像もつかねぇよ……。
一番大切なのは支えてくれるヤツだろ?
「……お前は大学卒業後、跡を継いで社長になる」
「はい……」
「それからは好きにしろ」
「え……?」
「大学卒業後はお前の自由だ。社長は伊月だからな」
久しぶりに見た父親の心の底からの笑顔。
そんな父親に言いたい言葉は一つ。
「当たり前ですよ。……ありがとう、父さん」