ラムネさんに繰り返しボールを投げていると、真っ白のクローゼットが目に入る。


クローゼットを開けると、クリーニングの袋が被さったままの制服。


1週間後は卒業式か……。


思い出すのは、うららちゃんとバカみたいに笑った日常と伊月くんと過ごした幸せな日々。


伊月くんが恋しい……。



「へへっ……なんだか寂しいね、ラムネさん」

「クゥーン」

「高校生じゃなくなる感覚が全く分からないの。うららちゃんと離れるのも想像つかないし……」


その場にヘタリと座り込み、あたしの足にジャレるラムネさんを抱いた。


涙を隠すようにそっと。



「ん~……伊月くんに泣き虫って言われちゃうね。会いたいな…早く」


連絡の一つもないなんて……


どこまであたしを不安にさせれば気が済むんですか?


俺様にもほどがあるよ……。


たまには紳士的に電話の一本くらい………


逆にそんなの伊月くんらしくないか。


「俺様だからこそ伊月くんです。うん……泣かない!頑張る!」

「ワン?」


不思議そうな目であたしの顔を覗く。


伊月くんのお嫁さんになる人間が、こんなに弱いはずないもん!