すぅっと、一回深呼吸。


俺は……俺はずっと恋華が好きだから例え険しい道でも構わない。


「僕……いや、俺は……結婚しません」

「……伊月っ」


ざわめく会場と父親の悔しさが滲み出た声。


もう、どーでもいいわ。


「俺の女は一人だけだ。泣き虫でアホで何考えてんのか分かんねぇけど……愛してるから」


周りの声なんて一切聞こえない。


聞かない。


「行くぞ!恋華!」

「はいっ……伊月くん!」


壇上から飛び降りて、走って恋華の元に行き腕を掴む。


走って人の間を掻き分けて会場を出ようとすると、マイクに大和の声が響く。


「おい!伊月だけ抜け駆けしてんじゃねぇよ!バーカ!菫!着いて来る覚悟できてるよな!?」

「大和……遅い…。早く連れ出してよっ!」


感情的になった菫の声なんて初めて聞く。


大和も菫を連れ出したとなったら、お互いの両親気まずいだろうな…。


とりあえず今は逃げること最優先!