《恋華side》
たくさんの人が足早に行き交う空港。
荷物をまとめた大きなキャリーをコロコロ引いて、飛行機が飛び立つ残りの数分を伊月くんと二人で過ごす。
特別なこと話すわけじゃなく、ただ隣にいて手を握るだけ。
それだけで幸せだよ……。
イタズラにアメリカ行きの飛行機のアナウンスが入った。
「行かなきゃ……。日曜日なのに、わざわざお見送りありがとう」
「お前一人じゃ心細いだろうと思ってな」
「うん……かなり心細いですね」
絡めていた指が、ゆっくりほどかれる。
それと同時に増す、遠距離恋愛の現実。
こんなに誰かと別れるって寂しいことだっけ……。
歩き始めたあたしの背中に伊月くんの声。
「電話とかしろよ!助けに行ってやるから!」
「伊月くんもねっ!」
少しの間、遠距離恋愛。
伊月くんに笑われないように頑張るね。