何も話してくれない……。


でも、そろそろ教室出なきゃ授業に遅れちゃうし……。


あたしがドアを開けようとすると、ぐっと力強く腕を引っ張られ………


体勢が崩れたあたしは勢いよく伊月くんの腕の中に飛び込む。


「うわぁっ……!ご、ごめんね!今よけるねっ……」

「いい。……俺のとこから逃げんなチビ」

「うん……。分かったよ。でも、授業が始まっちゃいます…」

「授業出ねぇよ。もちろん、お前も」


……え!?


あたしも、ですか…。


いつもみたいに自信満々の声じゃなくて、切ない声。


どうしたの…?


「伊月くん……。嫉妬?」

「す、するわけねぇだろ!アイツの方がいいならさっさと行けよ」

「行かないよ。伊月くんの側にいさせて下さい!」

「……じゃあ、このあとの授業サボリな」


空き教室の机に座って何を話すわけでもなく、二人の時間を過ごす。


冬に近付く眩しい太陽が、あたし達を照らした。