帰りは柳田の車に乗って、一人で別荘に帰る。
父親は会社近くの高級ホテルに泊まるみたいだ。
夏休みにわざわざ会社視察とか疲れた……。
「……お疲れ様でした。伊月様」
「なぁ、柳田。なんで俺はこの家の一人息子なんだ?」
「なんで……と言われましても…。子は親を選べませんからね」
「御曹司に生まれたこと、どれだけ後悔したか分かんねぇよ……」
俺のこと知らないヤツは御曹司に生まれたかった……
とか簡単に言う。
実際、そんなに甘いもんじゃない。
勉強は徹底的にやらされるし、人より劣ることは許されない世の中。
よく耐えてきたなぁ………。
「しかし、それだけ父上様は伊月様に期待をしているからではないでしょうか?」
「ちげーよ。自分が恥かかないように俺に厳しく言ってるだけ」
「卑屈にならないで下さい。今の伊月様は一人じゃありません。いるではないですか……側にいてくれる人が」
………恋華は俺の側にいてくれる。
柳田の言う通りだ。
俺は……一人なんかじゃねぇ。