会社の重要な役職フロアを見て歩く。


幹部クラスはみんな俺の父親を見て、ペコペコ頭下げてる。


社長だから当たり前かもだけど………


偉そうにしてんのが鼻につく。


「神城社長。本日、リサ夫人はご一緒じゃないのですか?」


リサ夫人………俺の母親。


母親とは思いたくねぇけど、母親。


「リサは今、イタリアで過ごしている。会社視察には来ないと言っていた」

「……そうでございますか」

「さぁ……次の視察へ行こう」


父親が促せばみんなが従う。


俺もその一番後ろを着いて歩くと、いきなり前の人が立ち止まった。


危なっ!!


「……おい、伊月。単独で視察をしてみたらどうだ?」

「単独で?」

「これから経営方針について話し合うから、お前が暇になるだろう。……頼んだ」

「はい。かしこまりました」


進んで行く父親の後ろ姿を眺めていると、俺と若い男性二人だけ取り残される。