一通り黙って話を聞いてると、とうとうきた。


婚約者の件。


「将来、息子の妻になる宮本家にも来ていただきましてねー……」


壇上でニヤッと笑う人は、父親じゃなくて策士そのものだ。


薄々、気付いてたけどな……


この展開。


「婚約者さん……来てるの?」

「みたいだな……」

「………そっか」


恋華の冷たい指が、俺の指に触れた。


もう恋華を悲しませたくないから………


俺は父親の重圧になんて負けねぇよ。


「伊月ー……菫と恋華ちゃん……バッタリなんてことないだろうな?」


俺の耳元で話す大和の心配そうな声。


「有り得る……な。いや、でもなるべく避けさせてくれねぇか?」

「俺が基本的に菫んとこ行くから。うららちゃんに任せよ」

「頼んだ……」


大和は菫の彼氏……会わないようにすることだって出来る。


恋華を傷付けたくない。