《杏、もうすぐで荒川会社の社長の乗る車が来るからな。
…くれぐれも失敗するなよ。わかったな。》
《はい。兄さん。》
ーープチ…プープー…
失敗…か…。
あたしはこの仕事で失敗なんてした事は一度もない。
いや正確には失敗しない為に2歳から訓練をしてきた。
それから3年間。
あたしは暗殺の訓練をしてきた。
5歳からは人を殺すようになった。
初めての仕事は、兄さんと姉さんがあたしの事を監視していた。
理由は簡単。
“仕事をしくじらないようにするため"
ま、結局失敗してないけどね。
ただ…それを見てた兄さんと姉さんが凄く驚いていた。
初仕事なのに殺し方が凄く上手かったらしい。
それを聞いた母さんが感動して泣いたみたい。
父さんは“さすが俺の子だ"って言って喜んでいた。
それからというもの、あたしは仕事をだんだんとこなしていった。
「失敗か…」
「杏、失敗したらどうなるか分かっているよな?」
あたしはビクッと身体が震え、後ろを振り向くとそこには兄さんがいた。
「兄さん…どうしたの?」
「ちょっと杏が気になったから来ただけよ。」
「あたしなら大丈夫。失敗なんてしないから」
“そう"と兄さんは言うとあたしの目の前からいなくなった。
「ほんとやめてほしいよ。いきなり現れたり消えたりするの
…あ、来た。」
そこには黒い車が1台止まった。
あの車の中には荒川会社の社長が乗っている。
ある人物から荒川社長を暗殺するようにと依頼された。
「さてと…仕事を始めようかな」
あたしの殺し方は素手で行う。
兄さんと姉さんはいろんな物を使って殺すらしい(どんな物を使うのか教えてくれない)。
あたしは物よりこの素手の方が殺しやすい…なんて思った時がある。
素手で殺すって言っても、実際は首の骨を折るだけ。
5歳からこの殺し方は変わっていない。
兄さんと姉さんからはいろいろ言われたけどね…
ーーガチャ…
車の中から荒川社長がでて来た。
かわいそな社長だな。
自分が今から殺されるって思ってもないのに…
ま、しょうがないか。
おっと…その前にみんなにあたしの暗殺プラン教えてなかったね。
あたしの暗殺プランは
1,荒川社長が車から出てきたら、あたしは荒川社長に近づく。
2,そして隙をみて荒川社長の背後に周り首を折る。
3,それが終わった後周りのSP達も殺す。(そうしないとあたしの顔が見られるから)
…があたしの暗殺プラン。
暗殺プランっていっても結構単純だけど。
ーーー5分後……。
「暗殺終了。
今回の仕事も簡単だったなー…
てか、SP弱すぎ。
あんなに人数多いくせにあたし1人で殺したしさー…」
…って、あたしなんで独り言いってるんだろう…
最近独り言が多くなってきている…
まぁでも…しょうがないか。
だってあたしには“友達"がいないから。
「友達かぁ…友達ってどんな感じなんだろう?」
「友達なんていらないよ、杏。」
「はぁ…兄さん。あたしの後つけないでよね。」
「あははは…つけてなんかないよ? 俺は杏の事が心配だからね♪」
「それがつけてるって言うの! あたしに構わないで」
「それは無理だなぁ~…だって杏は俺の可愛い可愛い妹なんだから。
それより杏。
お前は友達なんて物いらないからな。」
「…っ!…そ、そんなの分かってる!!」
「分かってるなら話が早い…
杏。お前に友達ができても……
お前は友達を殺す。」
「あ、あたしが…友達を殺……す!?」
「あぁ、そうだよ杏。だからお前は友達を作ってもいずれか殺す」
「なんで!! あたしは友達を「殺す」
そう…だよね。
だってあたしは暗殺者。
暗殺一家の次女だから…。
“分かったかい、杏?"と兄さんはあたしの顔を覗き込んだ。
うんとあたしは首を縦にうなずいた。
「分かったならそれでいい。
さてと…杏帰ろうか」
「うん…」
あたしと兄さんは屋根の上を走りながら家に帰って行った。
あたしの家は山の中にある。
しかも敷地面積が大きい。
あたしは兄さんと一緒に家の中に入った。
突然兄さんが…
「美紀、いるんだろう? 出てこいよ。」
兄さんがそう言うと…
木から姉さんがストンと降りてきた。
まぁ、姉さんが居るってのは気づいたんだけどね。
いちいち言うのもめんどくさかったし。
「あら、バレてたの? 隠れたつもりだったのになぁ~」
姉さんは“つまんないなー"とか言っている。
あたしの姉さんはたまーに幼稚な行動をする。
本当に姉さんなのか考えた時もある。
「バレバレだ。この俺をみくびるなよ」
「はいはい、みくびってすいませんでしたー」
姉さんは反省してないな。絶対。
そういう所が姉さんらしいから…
あたしは兄さんと姉さんが大嫌いだ。
いつから嫌いになったのかは忘れた…
物心ついた時から嫌いになった。
あたしは兄さんと姉さんには逆らえない。
…てか、一度も逆らった事なんかはない。
「杏、なにボケーっとしてんだよ。」
「ごめん…ちょっと考えごとしてた」
「杏…お前には友達なんて物、作っても意味がないからな。」
「そんな事ぐらい知ってるよ。兄さん」
わかってるよ。
そんな事………
あたしには友達なんていらない。
『杏。お前に友達が出来ても…
お前は友達を殺す。』
友達を殺す………。
本当にあたしは友達を殺すのだろうか…
「杏、今回の仕事どうだった?」
「ぇ……うん。失敗しなかったよ。」
「やっぱり杏はあたし達の自慢の妹だなぁ~」
姉さんはあたしの髪をなでなでしてきた。
「姉さん。あたしはもう子供じゃないからなでなでしないでよ」
“えぇ~"と姉さんは頬を膨らましていた。
ほんとに幼稚すぎる。
「杏様、尚也様、美紀様こちらにいらしたのですか…」
「おっ! 佐藤じゃん。」
佐藤というのは、暗殺一家の使用人の1人です。
佐藤の他にも沢山の使用人がいる。
特に佐藤はあたし専属の使用人。
あたしだけじゃなくて兄さんや姉さんにも専属の使用人がいる。
別にあたし専属の使用人なんていらないのに…
「どうしたの? 佐藤」
あたしは佐藤に何しに来たのか聞くと…
「ご主人様が杏様をお呼びしています。」
「父さんが…あたしを?」
「はい、そうでごさいます。」
ご主人様というのはあたしの父さんの事。
父さんは暗殺が凄く上手い。
小さい頃は父さんの事憧れてた。
まぁそれは随分昔の話だけどね。
今は父さんの事は大嫌い。
あと、母さんも。
「分かった。すぐ行く」
あたしは佐藤にそう言うと、リビングに向かった。
リビングっていっても凄く広いんだけどね…。
「父さん。あたしに何か用?」
「そうだ。 杏、お前に新しい仕事をやる。
…だか今回の仕事は特殊だ。
お前には、尻崎学園に潜入してもらう」
……潜入??
「はぁ!?
父さんどういう意味なの!?」
バンッ!とあたしは机を両手で叩いた。
「そのままだ。
お前には尻崎学園に潜入してもらう。」
「潜入って…あたしは暗殺を仕事にしてるんだよ!?」
「そんな事知ってる。潜入って言ってもある人を暗殺するために杏に潜入してもらうんだ。
今回の仕事は…
尻崎学園の校長を殺ってほしい。と依頼がきた」
「だからってなんで尻崎学園に通わなくちゃならないの??」
「それは、校長にはSPがついている。」
「SPついているからってなんで尻崎学園に通わなくちゃなら
どうせSPは弱いのにっ!
あたし一人で殺れる。」
あたしは父さんを睨みつけた。
「校長についているSPは…
葉山家がついているんだよ」
葉山家!?
葉山家ってSPが物凄く強くて一般のSPより強い所。
「なんで葉山家が!?」
「さぁな。俺には分からん…
だからお前に調べてもらう。
杏、お前に尻崎学園に入学してもらう。」
「入学……」
入学…。
あういう所に行ったら……友達、出来るかな…
「杏、余計な事考えるなよ。
お前は暗殺の事だけ考えればいい」
「っ! そ、そんなの分かってる!!」
「それならいい。
お前は俺のゆう事だけ聞けばいいからな、杏」
この言葉はあたしを締め付けている。
小さい頃から聞かされた言葉…
その教えを守って今日まで生きてきた。
あたしは…本当に父さんのゆう事を聞かなきゃならないの?って最近思う時がある。
「うん…。」
「分かったならいい。
尻崎学園に入学する日は3日後だ。
もう部屋に戻れ。」
あたしは父さんに返事をしないままリビングを出ていった。
「尚也、美紀いるなら出てこい。」
尚也と美紀がヒュンと現れた。
「まったく…お前らは人の話を盗み聞きが大好きなんだな」
はぁーっとため息をしながら言った。
「お前ら、杏のさっきの言葉どう思う…」
「あたしは、友達が欲しいって顔してた用にみえたわ」
“俺も"と尚也は腕を組みながら言った。
「あっ、でも大丈夫だぜ親父。
俺が杏に忠告したから。」
すると父はフッと笑った。
それにつられて、尚也と美紀もフッと笑った。
「杏に友達なんて必要ないもんね♪
まぁ、友達ができたら………
その子を殺っちゃうから。」
美紀はニコニコしながら言った。
実は美紀は杏の目の前では幼稚な行動をしている。
それを知っているのが尚也と父と母と使用人のごく一部の人だげ。
「あいからわず、美紀は怖いな。」
「まぁね♪」
この話をしている事は杏はまったく知らない…
あたしは部屋に戻ってはいない。
あたしが向かった所は………
湖だ。
湖って言っても、敷地内にある。
そこはあたしの大好きな場所。
ゆういつ一人で居られる…
「やっぱり、この湖にいたら落ち着くなー…。」
「ニャ~」
「りり…」
りりとはこの家で飼っている猫の名前。
りりは何故かあたしに凄く懐いている。
兄さんと姉さんにも少しだけ懐いているが…
だけど、母さんと父さんだけには懐いていない。
りりは家の中に住んではない。
外に住んでいる。
いつもどこで寝ているのかは分からない。
でも…りりはあたしが家の外にいたらあたしに近づいてくる。
「ねぇ、りり。あたし友達できたら……
殺すのかな?」
りりはニャ~と鳴くだけでなにも答えない。
「いいよね、猫って…暗殺なんかの仕事しなくて…。
あたし………
もう暗殺なんて……
やりたくないよ…」
あたしの目から温かいのが落ちていく。
これって……涙?
あたし……泣いているの?
初めて泣いた…
小さい頃、家族から泣く事を許されなかった。
だから…あたしは涙というものを見た事がない……。
「なに、泣いているだ。杏。」
「…!! 兄さん!?
な、なんで……この場所に…」
「なんでって…だって俺は杏をずっと監視してるんだから。
杏が余計な事をしているといけないからさ。」
「もう、あたしに構わないで!!」
「それは無理だな~…だって杏はまだ子供だからね。」
兄さんはアハハと笑いながら言った。
次の瞬間、兄さんはあたしこう言った…
「杏、なんで泣いている?
……もしかして、暗殺の仕事辞めたいって思ってないよね。」
「…」
あたしは無言で俯いた。
本当は、暗殺なんてもうやりたくない。
でも、殺らなきゃ父さんと兄さんが……
「杏。お前まさか暗殺の「あたし、暗殺の仕事辞めたい…」
「あはは…杏、それは無理だよ。
お前は俺と親父と美紀には逆らえない。
いや…逆らえないよう訓練したからね…」
…そういえばそんな訓練したな……。
『杏、お前は俺と美紀と親父には逆らってはいけないよ』と小さい頃兄さんに言われた…
あたしはあの日から…兄さん達から支配された。
「でも…でもっ!
もう、嫌なの…。
人を殺すのが。」
あたし、今自分の顔ぐちゃぐちゃだ。絶対…
なんで…兄さんはあたしの事分かってくれないの…
「嘘。人を殺すのが嫌なんて思ってない。
お前は、人を殺す時がお前の心を癒してくれるからね…」
あたしが……人を殺す時が心を癒す…!?
そんな…そんな訳ない!
ねぇ、兄さん。
兄さんはなんであたしの気持ちを……
分かってくれないの?