―駅―
電車がホームに入ってくる。人もまばらな早朝の駅。

イミテーションのパールのネックレス、
糸が弱くなっていたのか靴ヅレしたサンダルの足をみようとかがんだ瞬間、切れてピンクの粒が飛び散る。

クスクスクス…
周りから笑われる。
パールの粒は四方に飛び散ってとても拾い集めることはできない。

(…今日はサイテーだ。イヤなことばっかり。みんなユーイチのせい。アイツめ…)

かがんだまま涙がでてくる。

(…絶対…ゼッタイ…顔を上げたら笑ってみせる。)

“ドアが閉まります”
プルルルル…

息を吸い込んで
勢いよく顔をあげる。長い髪が肩に落ちたところで伏せた目を開ける。

誰かと―

―目が合う―

ニコッと笑う。極上の微笑み。
視線は今まさに電車から降りようとしていた男とぶつかっていた―

男が見つめる。―
笑顔に少し驚いたようなまぶしげな表情をした。

入れ違いに電車に乗り込む。
ドアが閉まる。
振り返ると窓ガラス越しに見つめている男。
口もとが何か言っているがベルの音で聞こえない。

―えっ…何?

我に返る。
アタシったら見知らぬ人に笑いかけたりして…