不安に耐えかねるみたいに、
気がつくと空に浮いてバネの方に延びていた自分の右手に驚いて
とっさに作るいたずら顔。


子どもじみた照れ隠しに内心自嘲しながらも
構えた中指で思い切りデコをはじく。


「うお!」


眼球がこぼれそうなほどぱっと見開いた両の目。


静かな微笑みがくしゃっとくずれ
やられたあって感じに歪む。


「不意打ちとはなかなかやるな。
おのれ、渋沢!」


頬を膨らませすねたような怒り顔。


にやっと、何か思いついたみたいなたくらみ顔。


バネと話すようになってまだ間もないのだけど
俺の知ってる子どもっぽいいつもの表情に戻ったことに安心を感じて、
ふと笑った俺の鳩尾に唐突な衝撃。


「…げほげほ。」


身を丸めせき込む俺にかまわず、けらけら大笑いのバネ。


って、頭突きはねえだろ。


せきばかりで言葉が出なくて、草地に尻をついたまま後退する俺に
容赦なく飛び込んで来る小っちゃい身体。


ボディータックルを受け止めて、むんずと捕まえた頭に、手加減しながらもぐりぐりと拳をあてる。


「渋沢のアホー!
んー、はなせえ!!」