「ああ。
でも何でこの花が宇宙と同じコスモスなんだ?」


「コスモスって言うのは
秩序とか飾り、美しいって意味の言葉でもあるらしい。
だから、きれいだと思った誰かが飾りにつかったりとか、花弁が秩序立って並んでるとかそんな理由かもしれないが、
私は、この花自体も宇宙なんだって意味だと思うんだ。」


「花自体が宇宙?
飾りとかの方が、語原としてわかりやすいけどな」


寝転がった姿勢のまま首を傾げる俺を
柔らかな日光を浴び鮮やかな色を見せるコスモスを背に
穏やかな微笑みを携えてちらりと振り返ったバネが、
空からの光に溶けて消えてしまうのではないかと、途方もない錯覚が前触れもなく心に過ぎり、
俺は身をおこし、まっすぐバネの顔を見返す。


「なあ、渋沢は宇宙って何かわかるか?」


俺に問いかけながらも
まぶしそうに細めたねこ目は、俺とのほんの1メートルの距離なんて遙かに越えた
空の果てを見つめるように遠い。


言葉が見つからなくて
なんなんだ、これ。


どうしようもなくざわざわした
不安定な何かが心を占めて行く。