最後の一口を口に入れると
勢いよく立ち上がったバネは、パンの袋を軽くたたんでポケットにしまい、歩き出す。


「さあ渋沢、宇宙を見に行くぞ。」


「ん、ちょい待てよ。」


あわててパンを口に放り込み、後を追う。


「ほら、拭けよ。
口の周りひどいことになってんぞ。」


「うん、ありがとう。」


追いついて、横に並びながらティッシュを一枚渡してやると、
こくりとうなずき、顔をごしごしこすりだす。


「この坂の下だ。
どうやって降りる?」


ちびのくせにどんどん速まって行く足がやっと止まったのは
川上に少し移動してから、現れた急な斜面の前。


「どうって…。
これが今朝バネが転がって降りた坂か。」


「うん。」


にっと笑って答えるバネは
なぜだかかなり誇らしげに胸を張って見せる。


「歩いて降りるけど?」


だから俺も、余裕たっぷりに言い返す。