「別にいいよ。どうせ貰い物だし。」


「今朝の女の子か?」


「違う。いつもつるんでる男友達。」


「そうか。」


仰向きに寝たままメロンパンをほおばるバネの目は秋の空を見上げたまま、
パンくずが顔の上に降って頬や口の周りにくっつくのさえ気にしていないようだ。


そして俺も
そんなバネを眺めながらメロンパンをほおばる。


足を投げ出して座った土手の草は柔らかで
川から吹き上げる風が緩く頬をなで、日差しの暖めた空気をかき回しながら流れて行く。


「そういやバネ、俺へのメモに進路調査票使ってただろ。」


「お?進路調査票?」


「ちゃんと提出しないと担任がうるさいぞ。」


するとバネは不思議そうに首を傾げ、ちらっと俺の方を見上げる。


「何でだ?」


「何でって、あれ集めるのが担任の仕事の一つだからなんじゃん?」


「ふーん。
でも私は紙をもうもっていないことだし、私の進路調査票は渋沢に一任すると言うことで。」


「わかった、とか言うわけねえだろ!
紙は明日返すから、自分の進路くらい自分で考えろよ。」


「面倒だな。」


「たしかにな。」