「バネ!」


昼間の秋の空は絵本のインクみたいに青く、高い。


自転車を止め、
土手に寝そべる小さな紺色の陰に叫んでみる。


そして、
朝のバネの声のようにはうまくは響かなかったけど
起き上がり緩い坂道に座ったバネは、
遠くからでもよくわかるあの笑い方で手招きしてみせる。


「渋沢。
まあ、座るといいぞ。」


自分の隣の地面をぽんぽんたたく小さな背中には
また無数の草のかけら。


「宇宙って何だよ?」


自転車のかごから篠原に握らされたメロンパンだけを取り
示された場所に向かう。


心はなぜだかわくわくしてて
遠足の日の朝の小学生みたいに、ともすると駆け出しそうで、
何やってんだかって好かした理性が鼻で笑い、なれたかっこつけではやる歩調をゆるめたけど、
こんな時バネなら、迷わず駆け出せるんだろうなと思い
おかしな見栄にとらわれている自分がなんだか惨めに感じた。