少しづつ後ずさりをして距離を広げた方がいいかもしれない。


そう思い、あたしは右足をそっと後ろへ下げた。


その瞬間。


パキッ……。


転がっていたガラスの破片が音を立てて割れた。


男がゆっくりと振り返る。


「和花……逃げて!!!」


あたしは悲鳴を上げるような声で叫んでいた。