〜願い続ければ必ず叶うなんて。信じていた私はまだ子供だった。〜


2009.04.14


「侑ー!おはよう!」

朝からハイテンションで侑に駆け寄る私を、道行く生徒が見る。

そりゃそうだ。

入学式早々膝上10cmのスカートを翻し、腰まで伸びたミルクティ色のウェーブヘアをなびかせ、颯爽と校内を歩く1年なんて、前代未聞なのだろう。

そんな私に追いかけられている侑は、もしかしたら少し、いや、すごく可哀想なのかもしれない。

「あぁ、おはよ。」

素っ気ない返事だろうが、私は気にしない。

私は好きなんだ。侑のことが。

大好きなんだ。世界が美しく見えるほどに。

好きだけど、言えない。

そんな気持ち、私には全く分からない。

好きなら言えばいい。

好きだって。大好きだって。

大声で叫ぼうと、なんら恥ずかしいことはない。

「おはよ、、、って菜乃花。」

侑のクラスメイトであり、私の親友兼大事な相談相手である朝香も登校してきた。

「なにその靴下。なにその髪の毛。なにそのピアス。なにその、、、」

言いかけた朝香がため息をつく。

「どうしたの?」

「どうしたの?じゃないでしょ。そんなギャルだか不良だか知らないけど目立つ恰好でなにやってるのよ。」

呆れ顔でお説教を始める。

「だいたいね、私ならまだいいけど、侑の為にももっと落ち着いた恰好しなさいよ。そんな恰好で待ち伏せされちゃ、たまったもんじゃないわよ。しかもクラスの入り口で。」

朝香に言われて周りを見渡すとみんな、私に注目している。

「朝香ー!」

私が視線をそらした隙に、侑が朝香に抱きついた。

「ちょっと!」

いかにも迷惑そうな朝香と楽しそうな侑。

朝香は肩まで伸ばした黒髪に一重の爽やかな顔からは想像できないようなグラマーなスタイルが印象的で、入学当初から侑の標的にされていた。

「朝香、今日も柔らかい。」

抱きついたままの侑が幸せそうにそう言うと、朝香は赤くなって私に助けを求める。

「侑ー。ねぇ、ねぇってば。」

私の声には見向きもしない侑を見て、たまにふと、朝香が羨ましくなる。

湧き上がる嫉妬。妬み。

愛されない悲しみは、たまに朝香へ妬みと言う名の矢を向ける。

そんな自分に気づくたび、自分自身を疎ましく思うのは、言うまでもない。








ーキーンコーン カーンコーンー





チャイムと同時に動き出す人の波。

私もその波に流されながら、2人と離れクラスへと戻った。