あのころ私達はまだ子供で、自分のことで精一杯だった。

自分の想いにすら自信が持てなかったり、なにをしても想いが届かなかったり、誰かを傷つけたり...

ねえ、今ならちゃんと君を愛せるかな。 

ねえ、今ならちゃんと君を守れるかな。



薄れていく記憶の中で、私はまだ君を見つめています...



2013.12.20


「ありがとうございました。」

マニュアルどうりのあいさつに少し頭を下げて、私は店内を出る。

外に出ると、冬の冷たい空気が私を包んだ。

「寒いなあ。」

思わず小さく独り言をつぶやきながら前を見ると、誰かが向こうから歩いてくる。






あまりの衝撃になにも言えず、ただ立ち止まる私をよそに、その人は私に目もくれず、横を通り過ぎて行った。






「....っ。」




ずっと忘れていた。硬く閉ざされた記憶の扉の向こうから、何かが音を立てて崩れていく。



あまりの辛さに、私はその場にしゃがみ込み、声を殺して泣いた。