「相変わらず姐さんラブだねと言いたいところだけど…、鶴。ここいらでそろそろいいんじゃないかな」
「せやから鶴や呼んでええんは姐さんだけや!」と声を荒げた鶴嫁怪(つるかけ)も、すぐに辺りの様子を見渡してから「せやな」と返事を返した。
「ここなら足場も悪うないし、ええ機会や。誰もおらん今にとっとと終わらすで」
「しかし目的の人物は見られないようだが…」
きょろりと首を動かすカルハに、鶴嫁怪(つるかけ)は深く深ーく溜め息をつく。
「阿呆。悪さしとる奴が退治しにきた僕らンとこにホイホイ現れるかい」
「なるほど。じゃあどうするって言うんだ。この荒れた森の中、戦闘は些か厳しいだろう」
にゃう、と鳴いて意見するカルハに、それこそ鶴嫁怪(つるかけ)は「阿呆」と言いながらニヤリと笑った。
「僕らが行かんとでもええ話、奴(やっこ)さんに赴いてもらうまでや」
ぱしんっと響きよく扇子を閉じた鶴嫁怪(つるかけ)は、足を肩幅より大きく開くなり、腕を伸ばして真っ直ぐに前を見据えた。
ここから仕事の始まりだ。