陽が傾きかけた頃。

夕日と同じくらい燃えるような真っ赤な着物を着た鶴嫁怪(つるかけ)は、噴水のある公園で木陰に腰を下ろしていた。

と、そこへ。鶴嫁怪より一回り小さい影が被さる。


「ここにいたのかい、鶴」

「…あんさんこそ。今までどこ行ってはったんや、カルハ」


肩まで伸びた白髪を揺らし、カルハは『くっ』と微笑む。

「ちょっとね」、そう誤魔化すあたり聞かない方がいいのだろう。
現に鶴嫁怪(つるかけ)も、自分が今までどこで何をしていたのか、口に出したくはなかった。

あの出来事は、自分だけの秘密。
自分と三隅だけの、小さな約束なのだ。