「あはは、君、面白いこと言うね」


けらけらと笑うタキシードの男性は、笑いを堪えられず肩を震わせている。

目尻の涙を拭い、男性は目の前の奇抜な青年に目を向けた。


「うんうん、確かに変わってるかもしれないね、君から見ると。タキシード姿でこんな所にいるわけだし。
けれど、『人と違う』ってのは言い過ぎじゃないかなあ」

「いや、そういう意味やなくて…」

「そういう君も随分奇抜で変わってると思うよ。個性的なのは、いいことだと思うけどね」


あははと笑う男性に、奇抜な青年・鶴嫁怪(つるかけ)はムムッと口を曲げる。

そういう意味で言ったんじゃないのに。


「俺の彼女も個性的だったしね。うん、素敵な女性だったよ」

「…彼女?あんさん、彼女いてはりますのん?」


唐突に紡がれた『彼女』という単語。

タキシードを着ているということは、その彼女と結婚するつもりなのか。

しかしこの男性が着ているタキシード、ところどころ汚れており、とてもじゃないが買い換えた方がよろしいんじゃないかと思わせる。