その青年は、随分と奇抜な格好をしている。

朱を基調とした着物と扇子に、髪は抹茶色のレモンメッシュ。

タレ目がちな色白くんだが、とにかく目立つ。容姿にしても、服装にしても、だ。

そんな彼を怪しまないというのも、なかなか無理な話だろう。


「脳みそならちゃんとあるわい!阿呆なこと言うとらんと、兄ちゃんもどっか……、」


そこまで言いかけ、はたと口をつぐんだ青年。

ジッとタキシードの男性を見つめるものだから、思わずたじろいでしまう。


「な、なに…?」

「…、兄ちゃん」


吸い込まれそうな、黒の瞳。

奇抜な青年は、目をそらさないまま、口を開いた。


「あんた、人とちゃいますな」


その呟きは、ぽつんと空に落ちていく。