「で、二人で何話しとったんや」
「別に。ちょっと注意しただけだよ」
森の中を走り、言葉を交わす鶴嫁怪は視線をカルハに向ける。
それを受け流したカルハは、走りながらも器用に肩をすくめたのだった。
「…まあええ。それよりカルハ、こっから移転魔法使えんのか?」
「朝飯前だ。しかし、目的は一体どこだい?」
「それは心配あらへん。僕が感じとるさかい、僕のイメージに合わせて飛んでくれりゃええんや。
今もばんばん感じるでぇ、ものごっつ強い『気』が!」
「…君には妖怪アンテナでもついてるのかい」
「阿呆。本職ナメんなや。こんぐらい朝飯前やっちゅーことや」
っはん、と鼻を鳴らして鶴嫁怪は扇子を畳む。
目だけで合図すると、カルハも頷き手を開いた。
「さあ行くよ、鶴。どこかの空間で落としても知らないからね!」
「せやからっ…鶴や軽々しく呼ぶんやなぁぁあああああいッ!」
鶴の叫びを最後に、二人の姿は跡形もなく消えたのだった。