「えげつない『気』や」
「…強い思いにえげつない『気』、ね。ということは、呪縛霊やそこらへんなんだろうね」
「せやな」
森の奥をジッと見つめていた二人の顔は、少しばかりか強ばっている。
それに気づいた唐傘小僧は(妖怪のくせに)恐縮して(妖怪のくせに)ぶるりと身を震わせた。
「あ、あう…。あちしはその、それで…」
「ん、おお、きずつないな。もう行ってもええで」(※きずつない=すまん)
「は、はいぃっ。鶴の旦那も頑張ってくださいなっ、そ、それじゃっ」
「おう」
震える唐傘小僧を安心させるよう微笑みかけた鶴嫁怪(つるかけ)は、もう一度てっぺんを撫でてやるとさっと森の奥へ行ってしまった。
一方。
「へ、へへっ…鶴の旦那に撫でられちったよ…うへへ」
ニヤニヤデレデレと身をよじり嬉しさを表す唐傘小僧は、鶴嫁怪の行った方向に向かって熱い視線を向けていた。