すぅ、と息を吸い扇子を構える。白いさんざしの花がほわりと光った気がする。


「哈ッ」


ぱちんっと扇子を開き勢いのまま扇子を真下に降り下ろす。と、同時に森が大きく揺れた。

一瞬だが、ズンッと重みのある気が森全体に加わり震動を発生させたのだ。

しかしただ震わせただけでは終わらない。


「来たよ、鶴」

「わぁーっとるわい。カルハ、黙っときい」


びゅんっ!と勢いよくこちらに向かってくる何か。

その塊が鶴嫁怪(つるかけ)ら二人にぶつかるその直前に、今度は閉じた扇子で地面に叩き落とした。

「あぶぇッ?!」変な声を発して地面に強打したソレは、起き上がるより先に鶴嫁怪にむぎゅりと踏まれる。


「あんさんが胸くそ悪い『気』の原因かいな?ったく、大人しゅうせんかい!」

「あうっ、う、うぅう~!」

「ああ?!何やて?!」

「む、むぐぎゅぎゅ~!」

「鶴、君踏んでること忘れてないだろうね?その子、踏まれてるから口が塞がって喋れないんだよ」