「一体…どうしたの?何があったの、宮河さん」


 千春はかなえに尋ねる。



「え…と、私がさっき、ショックでトイレに駆け込んで泣いていたら、野谷さんが先にいたみたいで、フラフラしてダルそうだったのに励ましの言葉をくれて…。
そうしたら、倒れちゃったみたいで。
あんまり体が、強くないんでしょう?野谷さんって」




 かなえは少し取り乱したように、早口で捲し立てた。



 それを聞いた千春は、羽村の最期を思い出してしまい、頭を左右に振った。



 (…思い出したくない…。)



 陽菜は、あの後トイレに駆け込んだんだ。そうだ、さっき、陽奈の名前を呼んでも返事してくれなかった時、フラフラしていたような。


 千春は、陽菜が心配になった。



「なんで分かったんだ…?陽奈が体強くないって」



 陽菜は、昔から体調を崩しやすかった。小学生の時も、風邪で、結構な頻度で休んでいた。


 最近も、あまり良くないらしく、青白い顔色をした陽菜を、千春も光太も見ていたし、休みはしなかったものの、口元を押さえてトイレに駆け込むということもしばしば。



「見てて分かりました…。あの、さっきも、小倉くんが、野谷さんを運んでて」



 かなえの優れた観察眼に少し驚く。悲鳴や混乱で、それどころじゃなく、近くにいた千春ですら気付くのに遅れたからだ。