「遅、いな…陽奈。どこ行ったんだろう」



 千春は光太と一緒に体育館前で陽奈を待つ。



 陽奈はゲーム…が終わったと同時に、走ってどこかへ行ってしまった。危なっかしい背中に向かって、名前を呼んだけど、届いてなかったようだ。



 …羽村が何者かに撃たれた。おそらく、この“人間狩り”の軸となる、中心人物の仕業だ。



 人が殺されるのを目の当たりにした千春の、掴んだスカートが、その部分だけ皺になっていた。



「ハァッ…あのっ、野谷さんと仲が良いんですよね?」



 声の方へと、千春と光太は振り向く。



「え…?宮河さんと…陽奈?」



 そこには、かなえと、かなえに肩を貸してもらって立っている陽奈がいた。



 陽菜の目は、薄っすらと開いているが、意識は朦朧としている模様だった。



「宮河、陽奈を貸してくれ」



「…貸してくれって、あたし、物じゃあないよ」



 陽奈はか細い、今にも消え入りそうな声で言った。



「いいから!」



 千春は状況が読めず、頭にハテナマークを浮かべるばかりだった。


 かなえは光太に近づき、光太に陽奈を預ける。光太は、陽奈を体育館の壁にもたれかかるようにさせ、座らせた。



 ヘナヘナ…と、まるで人形のように、姿勢が崩れて行く陽奈。思わず、目を瞑った。