地球の重力が、どうかしてしまった。それくらい、視界はグルグルと回り、今にも倒れそうだった。けれど、伝えたい言葉が、意思が彼女にはあった。




 “宮河さんは、悪くない”と。


 そして、“だけどね、―――”と続けよう。



 陽菜は、座り込んでるかなえに言った。



「宮河さんは…わる、くないよ」



「っ!?」



 まさか、野谷さんが居るだなんて、思わなかった。そんなような驚きの表情で見上げている。



「だけどね、」



 本当に小さい声だ。聞こえてるかもわからない…。


 だが、どん底に突き落とされ、苦しむかなえの声を聞いて、言わずには居られなかった。



「────もっと、」



 (あぁ駄目だ。倒れちゃうっ。)



「…………んだよ」





 膝をついて倒れこむ。吐き気と目眩が、波のように襲ってくる。




「野谷さん!?」



 かなり焦った声色で陽菜の苗字を呼ぶかなえ。


 どうやら、陽菜の言いたかったことは、伝わらなかったようだった。




 陽菜は、再び意識を失った。