ところがいつまで経っても、なにも起こらない。なんの音も立たなかった。
そして、羽村は静かに銃を下ろした。
「俺には…やっぱりできない」
ため息と共にそんな言葉が漏れた。
(俺は、宮河を殺すことなんかできない。絶対、しちゃ駄目だ)
やっぱり羽村君のような優しい人には、そんなことは出来ないのだ、と陽菜は思う。
ピンポンパンポーン───
恐れていた音が、体育館に鳴り響く。体がビクッと跳ねる。
『では、羽村 夏樹を対象にします』
機械音ではなく、ボイスチェンジャーで変えられた、謎の声が聴こえた。さっきよりも低く感じられて、不気味だった。
羽村は力なく笑った。
「ハハッ…俺、どうやって死ぬんだろう」
渇いた笑い声。羽村の頭の中は真っ白で、“死”を恐怖していた。
自分も、血を吹き、肉片を散らして、息絶えるのだろうか、と。
みな、息が詰まり、声が出せなかった。目を逸らすこともできない。