光太の表情が歪んだ。陽菜は、俯いていて、表情を見せないようにしているようだった。
光太の心の中に、憎しみが宿る。
「悪いのは…こんなゲームだ」
そう言うと、光太は陽菜の頭から手を離し、自分は、舞台の方で行われるであろうことを見届ける様子だった。
「…っ」
陽菜は、またもや吐き気と頭痛に襲われ、座っているのも辛かったが、舞台の方を見た。
「…ごめん…」
すると、羽村がそう呟き、舞台の床から何かを取り上げた。
羽村君はそれの重さを確認する。そして、唇を震わせた。
あれは―――。
「銃…」
誰かが、ふと、零したように言う。
羽村はその黒光りするオートマチックの銃を、構えた。あろうことか、安全装置と呼ばれる、発砲できなくする部分は、すでに解除されていて―――舞台に落ちた時には、暴発してもおかしくなかったのだ。そうしたら、羽村やかなえだけでなく、体育館にいるすべての人が危なかった。
軽く開脚する。素人の構え。
羽村が銃を撃てる体勢になると、かなえは、嗚咽を押し殺し泣いた。
見ちゃいけない。そう分かっていても、クラスメイトのほとんどが、目を逸らせなかった。視線は舞台へと注がれている。
誰も喋らなかった。
誰も動かなかった。
ただ、座って見ていた。