トン。光太は、陽菜を腕から降ろした。


 途端に、目眩に襲われるが、それを顔には出さなかっま。陽菜は込み上げる吐き気を堪える。


 クラスメイトの雰囲気はいつになく粛然としていた。まるで、葬儀のように。



 垂れ幕の開いた舞台の手前に、クラスメイトたち…、光太と陽菜と、唯たち以外が席順に床に腰掛けていた。



 光太が自分の席の場所に座るのに続けて、陽菜は千春の前に座った。







『これから、“人間狩り”のルール説明をします』



 人間、狩り…!?
 物騒な言葉に、騒然とした。


「ねぇ、『人間狩り』って、『もうじゅう狩り』みたいじゃない?…よく分からないけど」



 千春が後ろからそっと耳打ちする。




 そう、小学生の時によくやった、あの『もうじゅう狩り』と名前が似ている。でも、もうじゅうが、“人間”。



『ルール用紙が配布されます』



 バタン。



 少し待つと、先ほどまで放送で車へっいた担任の武本が入ってきた。脂汗を浮かべ、なにかにひどく怯えている様子だ。



 武本は黙って、藁半紙のプリントを最前列の子に配る。その手は誰が見ても分かるくらい震えていて。


 プリントがみなの元へと届くと、無言で武本は去って行った。



「終始無言、すごい、怯えてる感じ」



 陽菜は扉を開ける担任の背中を見つめて呟いた。



 ガチャ。


 クラスメイトたちは、外から鍵をかけられていることにも、気づかなかった。