千春は目の当たりにした光景を呑み込めずに立ち竦むほかなかった。


 それを見ても未だ信じられないもので、異常なスピードで脈を打つ鼓動を感じながらも、平常心は保たれていた。


 けれど、気が狂いそうだ。




 1人の取り巻きは、2人より少し離れた場所で倒れていた。


 逃げてた…、この子。『死にたくない』と断末魔の叫びをあげて。






 (やっぱり、本当に死んでいる…?)


 彼女たちは依然として、毫も動じない。


 血溜まりに沈み、精緻とも呼べる、細かい血肉を撒き散らしている。



 つい十数分前までは、傲慢な女王様気取りの女子高生と、その取り巻きたちだった肢体は、完全に静止していた。醜い、成れの果て。




 やがて、千春は、非現実的な異臭に胃液が込み上げてくるのを感じ、これ以上見ていたら限界が訪れるので、光太の元へと戻った。




「そ、そっち行かない方がいいと思う。矢澤さんたちが…」



 光太は千春に言われ、ハッとしたような素振りをした。それは本当か、と驚愕の色が表れた。



「…どうしようか」



 光太の声は震えていた。千春を疑ってはいなかった。モニター越しにとはいえ、悍ましい光景をその目で見たからだ。