光太は、陽菜のことを心から心配している。

 いつだって、そうだ。千春よりずっと付き合いが長くて、深い仲で、楽しそうに話したり、光太が陽菜のことを気にかけたりしている度に、千春の胸はチクチクと痛む。




 千春は、嫉妬心を持つ自分に情けなさを感じたが、それを振り払い、それから無言で一階まで降りる。


 しかし、千春はずっと不安だった。早鐘のように心臓の鼓動は鳴る。



「ちょっと待って!ここで、動かないで!」


 そう、保健室に行くには、さっき唯たちが殺された靴箱を通らなければならない。


 もちろん、唯達が死んでしまったなんて信じてない。けれど、万一本当だったら?自分たちも、殺されてしまうかもしれない。


 それに、光太が、あんな目に遭った唯達を生で見たら、悲しむと思うから…。





「っ!?!?」



 靴箱には、さっきテレビで見た状態のままの矢澤さん達がいた。でも、それは、画質の粗いモニターよりもずっと、リアルな実像で。


 鼻孔を突き抜ける生臭さ。



 (本当に、殺されてしまったの…?作り物じゃ、なかった…?)



 愕然とした。


 映画で見るよりも、ずっとずっと凄惨な現場────。