「あたしが、そんな事で莉伊を嫌いになるとでも思った?軽蔑するかと思った?」

俯く視界の片隅で、菜月の視線が痛い程感じられる。



だけどあたしは何も言葉が出て来なかった。


上手い言い訳も、下手なジョークも、今の菜月には全て通じない。

結局の所、あたしは菜月が言うように嫌われて軽蔑されるのが怖かったんだ。

いつも恋に対して真っ直ぐな菜月が、不倫なんて曲がった恋を認めてくれるはずがない。



実際、あたし自身が認めていなかったのだから。




「…莉伊、あたしに言ってくれたよね?」

答えないあたしに、菜月は次々に言葉を投げてくる。

ただ、悲しみを含んだ声で。




「後悔なんてしない、そんな人生にしたいって莉伊、あたしに言ってくれたよね?」