本当はわかってた。



菜月が今から言おうとしてる事も、いつも心配してくれてる事も。

だからこそ、いつも無理して笑って
菜月に変な気を遣われないように心掛けていたのに。



菜月は、全てお見通しだったんだね。




「……平気だよ。と言うよりも、仕方ないの。全部、あたしがいけなかったんだから。」

髪止めを解くと
胸元あたりまで伸びた髪の毛がサラリ、と音を立てた。




「…嘘つき、だね。莉伊は。」

シンと静まったロッカールームで、菜月の小さな溜め息があたしの耳に届けられる。




「どうして、話してくれなかったの?…不倫、してた事。」

躊躇いがちに“不倫”と口にした菜月に、あたしは黙り込んだ。



いつかは問われる、と思っていたけれど
それは意外にも早く菜月の口から漏れる。