………………
「ありがとうございました。」
チリン、と鳴る鈴の音に下げていた頭を上げる。
伸ばしっぱなしの前髪を耳に掛けて
いつもと同じようにレジに戻ると花束を作った後に散らかったカウンターを片付けた。
季節は2月を追い越してもうすぐ春を迎えようとしてる。
だけどあたしはあの日に縛られたまま。
仕事に行って、終わったら家に帰る。
そんな毎日を淡々と過ごしてるだけ。
でも自分じゃ何も変えられなくて、あたしは後ろを向いたまま
ただ、迎える毎日を越えてゆく。
こんなあたしを無気力、とでも言うのだろうか。
「……っ!」
ぼーっと片付けをしていたら、薔薇の刺が指に刺さってあたしは咄嗟に手を引っ込めた。