門をくぐると、僅かに漂う血の香り。

そして進むごとにはっきり聞こえてくる叫び声と鈍い音。









屋敷に土足で入ると須藤組の組員らしき男が何人も廊下でうずくまっていた。





烈は男たちに目もくれず、屋敷の一番奥に向かって進んでいく。













烈「………廉兄」


急に止まった烈。
視線の先には扉の前に立つ数人の男と、
男を従えた廉さん。






廉「……やっと来たか」



烈の声に振り向いた廉さんは無表情だったけど、溢れ出す殺気から怒っていることは分かった。



響「状況は?」



廉「あとは幹部以上だ。全員この部屋に籠ってやがる」


そう言って廉さんは扉を指差す。










ゆっくりと廉さんの視線が動き、俺と目が合った。

『………』



廉「……翼だったよな?」



『……はい』




廉「……律を助けるのはこの後だ。まずは須藤組を潰す。このままだと何度でも同じことを繰り返すからな」


その声は冷静だけど何処か怒りを含んでいた。



『…………はい』






………ごめんな、律。


すぐに助けに行くから。











廉「……怪我だけはすんなよ」


そう言って廉は扉の方に向き直った。










すうっと息を吸って廉さんの背中を見つめた。