「おぬし、名はなんという?」

散々人の膝を舐めた男は血の気の戻った顔で尋ねてくる。

「名も言えんのか?おぬしは…」

呆れた声で言われれば、こっちは腹が立つ。

「おぬし、おぬしって煩いなぁ!
相手に名乗らせる前に自分からだろ?
人の膝舐めといて偉そうに!」


あまりの非常識者につい大声になる。

「おぬし、若いわりにまともな事を言う…
そうぢゃな、まず、名乗らねばな…
我は紅月ぢゃ
さて、おぬしはなんと言う?」

平然とした偉そうな態度の男にボクは呆れ果てた。

「純夜…」

呆れ果てて名乗ってしまった。

「すみや…漢字はどうぢゃ?」

「…純粋な夜…だけど?」

「純夜…良い名ぢゃ…
その名が我を誘ったのぢゃな…」

何か一人で納得してしまった彼は、ボクの頬を指で撫でた。

「純夜…
そなたは今日のこの瞬間から我のモノぢゃ。
勝手に他のモノになる事、勝手に死ぬ事も許さぬ。そなたの全てが我のモノ。
代わりに我の命はおぬしが握っておる…」