「やっぱり外は寒いですね~。そろそろ帰りましょうか」

「あっ、そうですね!わざわざ持って来てくださって本当にありがとうございました!」

「いえ。……せっかくだし本当はご飯にでも、と言いたいところですけど、明日も仕事ですからね。我慢します」

「そう、ですね。……残念ですけど」

「……また連絡しますから」

「!……はい」


うん、と頷いた惣介さんは「送ります」と言ってくれたけど、「すぐそこですから大丈夫です」と丁重に遠慮させてもらう。

「やっぱり送ります」「大丈夫です」を何度か繰り返した後、ようやく惣介さんが折れてくれて、「温かくして休んでくださいね」と“気遣い名人”の顔を覗かせて、改札の向こうに笑顔で消えていった。

不意の惣介さんの訪問が夢だったかと思うくらいあっという間のことだったけど、私の中に残ったのは惣介さんの温かい笑顔だった。

これで残りの平日も頑張れる、と思った。



どんな使い心地なんだろうとどうしても待てなくなった私は、その日の夜に洗濯機を回していた。

惣介さんからの洗剤と柔軟剤を使って。


そして、その香りに気付いたのは、服が乾いたかどうかを確認した時だった。

ふわりと鼻をくすぐった香りが……惣介さんと同じ香りだと。